ツーリスト・アプローチから考えたこと

「ツーリスト・アプローチから考えたこと」


私は、ガンダムの話の説明をしてくれる人たちが必ず言う「あれはね〜、どっちが味方とか敵とかじゃないんだよね。」というフレーズを聞くのが好き。そして、「考え方の違いだから」と続く、あれ。定期等な言い訳として使われたら嫌な言葉ですが。


ーーーーーーー


多文化が入った教室において、同じクラスの子どもの出身地(ルーツを持つ国)についてその子どもに発表をしてもらったり、多文化の入っていない教室に、先生が調べてきた国のことを「今日は日本の日」とか「今日はロシアの日」などとして学ぶ。コレがツーリスト・アプローチ。


内容はその国の食べ物の試食や民族衣装を着る、有名な歴史的な観光地を紹介する、などです。


日本で言えば、お寿司・着物・富士山・忍者・刀・相撲、など。


紹介する側の日本人も「普段は着物でお寿司を食べながらお相撲を見に行ったりしないよ」と知っていても、「日本ならではの特色を出さねば」と気を遣って「伝統的な」ものを提供します。

新しいものの例では新幹線くらいかな。十分古いけどw。


提供される方も、「日本人もチーズ食べますよ」「ドレス着ますよ」とか最先端技術とか、そういうプレゼン内容を期待しているわけではないですね・・。


提供される側は「着物に寿司で相撲を見ていない人もいる」というのはなんとなく想像できるでしょうが、「日本では、人口の半分くらいは着物を着ているんじゃないか」とか心の何処かでは思っていたりするんですよ。結構。


中国人がみんな自転車に乗っているとか、ロシア人がキャビアを食べまくっているとか、アメリカ人が皆コーラ飲みながらハンバーガー、フランス人はみんな朝からパン屋さんでパンを買っているとかそういうイメージ。


報道などで事実を知って、裏切られると「へ〜!!!」と思う。けれども、その後イメージが払拭されることは意外と少ないのではないか。事実を伝聞で知っても自らが幼い頃から抱いているイメージがなかなか無くならない。上書きされない。


学校におけるツーリストアプローチというのは、短時間で一つの国のことを知った気になるようなその国や文化の知り方で、その是非はわかれる。正の効果があるとも言えるけれども負の効果もあるとも言える。


ーーーーーー


留学離れが報道されているけれども。

「留学」でも「遊学」でもなんでもいいのだけれども他の文化の価値観を肌で実際に感じることの大事さというのは、いくらIT革命によってバーチャルに体験できるようになったからといってなかなか埋められないものなのではないかと思っている。


「人種差別があります」と言われるのと「実際に人種差別をされる」のでは全然心の動き、思うことが違う。差別を教室で再現して子どもたちに学ばせる特殊な授業法がありますが(訓練を受けた人がやらないと生徒が傷を負うだけなので見よう見まねでやってはダメです)リアル差別はそれともまた違う。差別はされなくても、白人100人のクラスにたった一人の有色人種という体験だって興味深い。

ネガティブな経験だけではなくてポジティブな経験だってたくさんできるはず。嫌でも自分が育ってきたところの価値観を見なおさねばならなかったりや、見かけや国籍によって周囲の期待が異なったりする。


言葉ができなくても文化の差異はかなり見えるし、体験できるけれども、更にその地域の言葉の内容や運用や比喩の例を理解できるようになると、人と人との距離だとか、この文化がどういう歴史をたどっているのかとか宗教観とかなんとなくわかってくる。


どんな職業の人にも言えると思うのですが、私は特に興味が保育分野なので保育者になる皆さんに言いたいのですが、学生のうちにできるだけいろいろな文化圏を体験して欲しい。

文化的差異というのは別に日本・海外だけではない。国内でも価値観の違う共同体ってあるでしょう。そういう文化に触れてみて欲しいなあ。「違い」があるという事実に気づいて欲しい。


以前に書いたけれど、(人間の鍾乳洞化。自分から鍾乳石を生やしていこうみたいな話)知識ではなく経験による鍾乳石がある程度生えてしまえば、そのあとは本を読んだり話を聞いたりすることで既存の鍾乳石を伸ばして新しい価値観を想像する力‥考える力はついてくるはず。(それだけではもちろんカバーできないような文化だってあるでしょうけれども。)


親御さんには、子どもが鍾乳石を生やす(=下地作り)ように励まして欲しい。(この励まして、という言葉、encourageといいたいんだけどうまく訳せなかった。日本語の励ますとちょっと意味が違うか?)


自分の中の尺度の引きだしが増えれば、それだけ多様なアイデアを自分の中から引き出せるし、仕事にも役にたつでしょうし、相手も理解できるでしょうし。


保育の現場で「なんか働きにくい」と思っている人こそ外に目を向けて欲しい。


一人では現場は変えられない、でもこういう人材が増えれば現場も変わるし業界も少しずつ変えられるかもしれませんよ!